選挙戦はありえないほどの接戦となり、どちらの候補者が勝ってもまったく不思議ではない状況にある。
僕ら日本人からしてみると、一体なぜインチキの塊みたいなトランプ氏がここまで支持されるのか意味がわからない。それは日本人に限った話だけではなく、同じアメリカ人であっても、国の半分を占める反トランプ派からしてみても同じ話で、彼がなぜ支持されているのか皆目見当もつかないような状況なのだ。
日本ではトランプ氏の支持者は低所得の白人層だけ、と言った感じで報道されていたようだが、それがどうして案外そうでもないのだ。そこそこ高学歴で高収入の学校の先生や中小企業の経営者といった人々に至るまで、幅広い層の人々が彼を支持している。僕のフェイスブック上でつながっているアメリカ人の友人たちも、少なからずトランプ支持を表明している。
一体、なぜトランプ氏はここまでの支持を得ているのだろうか?
「システム」への不信感
トランプ支持者は確かに低所得の白人が多いとは思う。また、極端に男性に偏っているのももう一つの特徴だろう。しかし、そうは言いつつ女性もいるし、高所得者の人々も確かにいるのだ。
では、一体何が彼らをトランプ支持へと駆り立てるのだろうか? トランプ支持者が共有している思いとは、一体なんなのだろうか?
僕が思うに、それは今のアメリカを回している「システム」への不信感なのだ。企業や政治家が結託し、庶民のことなんかお構いなしで、大企業が儲けることだけを最優先するシステム。そんな「システム」に人々は辟易とし、大きな不信感を抱いている。
現代アメリカは、医療にも教育にも恐ろしく金がかかる。かといって儲かる仕事はあまりない。工場労働もコールセンター業務も、海外に出ていってしまった。残っているのはファーストフードのパートばかりなのだ。だから庶民の財布は常にすっからかんだ。でも、大企業が危機に直面すると、直ちに税金が投入される。「システム」そのものは常に温存されていくのだ。リーマンショックしかり、重油流出しかり。
そんな「システム」に対する不信感がマグマのように溜まった人々の前に、さっそうと(?)現れたのがトランプ氏なのだ。
危険人物だからこそ魅力的?
実はトランプ支持者だって、彼の言うことが全て実現できるなんて思っちゃいないだろう。メキシコとの間に壁を作るのも、イスラム教徒を締め出すのも現実として得策でもなければ、実現可能ですらない。
しかし、トランプ氏ならば、このシステムを中から破壊するだけのパワーがあるのではないのか?と夢を持たせてくれるのだ。
だから、提案の実現性などどうでもよい。いやむしろ、実現性など一切無視して、歯切れのいいことを叫べば叫ぶほど支持が高まっていくのだ。トランプ氏に期待されていること、それはシステムの破壊なのだから、当然のことだろう。
彼の過去の無茶苦茶な行動が明るみに出ても、それはマイナスに作用しない。むしろ「何かやらかしてくれるのではないか?」と言う期待値を盛り上げてしまうのだ。
一方のヒラリー氏はと言うと、つまりはこの「システム」の中の人だと思われてしまっている。だから実際に庶民のためになる現実的な政策を唱えているにもかかわらず、嘘くさいと思われてしまう。そして、一流大学卒、弁護士、政治家、国務長官といった彼女の華々しい経歴さえもが、むしろマイナスに作用してしまうのだ。
そしてアメリカは分断された
この選挙戦を通じてアメリカはすっかり分断されてしまった。そしてこの分断は、オバマ氏が当選した時から始まったように思う。マイノリティ対白人という構図は確かにあるが、「システム温存派」対「システム不信派」というような捉え方をすることができるのかもしれない。そしてこの分断は、大統領選が終わった後もずっと残るだろう。
しかし、である。
ひょっとしたらこのトランプ氏対ヒラリー氏の対決は、そもそもまったくの茶番なのかもしれないと思ったりもする。
そう。アメリカを分断するための巧妙な罠なのではないのだろうか?
アメリカ人がみんなで結託して、富が平等に分配されるよう、あるいは医療費や教育費が下がるように運動でもされたら、困ってしまうのは「システム」そのものなのだ。しかし、対立軸を作って分断させ、お互いをいがみあわせておけば、庶民たちの不満が大きな流れとなり、この「システム」を司る為政者たちに向かうことはない。
仮にトランプ氏が選ばれたとしても、彼自身がそもそもシステムの中の住人なのだから、それを本気で壊すことなどあり得ない。ヒラリー氏が選ばれても同じことだろう。そもそもクリントン夫妻とトランプ夫妻は仲の良い友人同士だとの話もある。
こうしてアメリカ人たちは「分割して統治」され続けていくだろう。
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