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Brighture English Academy 代表。趣味はウクレレとかハイキングとかDIYとか旅行などなど。在米20年。シリコンバレーに住みつつ、日本とアメリカとフィリピンで会社経営しています。最近は英語教育がライフワークになりつつある。

2013年4月20日土曜日

越えられない「壁」〜ボストン爆破事件に思うこと

 ボストンの爆破事件、26歳の兄と19歳の弟という2名の容疑者が特定され、兄は銃撃戦の末に射殺。弟は現在も逃走中とのことです。

 逃走中の弟が自首でもしない限り、兄弟がどのような動機でこのようなテロ行為に至ったのか、本当のところが明かさせることはないでしょう。その一方で現在漏れ伝わってくる断片的な情報を張り合わせてみると、この2名の若者の心情は分からなくもないな、と感じてしまう自分がいます。

生い立ち
 兄弟は2003年にチェチェニアからの難民としてアメリカに入国。兄のタメルラン・ツァルナエフは当時16歳、そして弟の弟のジョハル・ツァルナエフは9歳です。

 兄のほうはアマチュアボクシングで活躍。3カ国語を話し、ピアノもうまかったそうです。コミュニティカレッジに通い、エンジニアになりたいと考えてたとのこと。ところがアメリカ社会にはとけ込めなかったようで、自身のフェイスブックのページに「アメリカ代表としてオリンピックに出場したい」といったコメントを残す一方「僕にはアメリカ人の友達が一人も居ないし、彼を理解できない」などといった書き込みもあったようです。

 弟はレスリング部のキャプテンをして活躍。大学に進学を果たし、順調にアメリカ生活にとけ込んでいたように見受けられます。インタビューに応じた高校時代の友人によると、弟はレスリング部のキャプテンとして尊敬されていたそうで、英語に訛りもなく肌も白く誰も彼のことを外国人扱いしていなかったそうです。そして今回の犯行にはみんな一様にショックを受けているなどと話しています。

 興味深いのはこの2人の叔父のコメントで、突きつけられたマイクに向ってこの2人のことを「負け犬」(Losers)と呼び、「一族、そしてチェチェン民族の顔に泥を塗った恥だ。」と怒った様子で言い捨てたのです。




 ウチの息子たちは7歳と5歳の時にアメリカにやってきましたが、英語ができるようになるまでは心から当てにできるのはお互い同士だけ、といった感じで、非常に結びつきの強い兄弟に育ちました。
 うちの子に限らず、異国で結束する兄弟の話はよく耳にします。この兄弟もまた同じように非常に固い絆で結ばれ、兄の心情に共感せざるを得ない弟がいたのかもしれません。

越えられない「壁」
 アメリカで生まれ育った生粋の「アメリカ人」とアメリカに帰化していく移民たちとの間ではどうしても埋められない「壁」があるものです。それは育った環境からくる価値観の違いに根ざしており、例え何十年アメリカで過ごしても、その違いを「よそ者」として客観視せざるを得ない自分がいるものです。習慣、宗教、他人との距離の計り方、言葉……。「壁」は幾重にも重なっています。

私も16歳の時にアメリカに来て、大学時代は水泳部でした。チームメイトは全員白人。それなりに仲良くなり、楽しい青春の一時を過ごしましたが、それでもみんなに溶け込もう、話を合わせようと必死だった自分がいました。しかし話が少年時代の出来事や夢中になったテレビ番組、あるいは将来の夢などに及ぶと、どうにも埋めようのない壁を感じたものです。

ある者はその壁を克服しようと必死になり、あるものは「そういうもの」として壁を乗り越えられないことを受け入れて行きます。しかし何年暮らしても「相容れない部分」は残るものですし、心の底からホッとできない苦しさはあるものです。

 この壁の存在は、自分が黄色人種というアメリカではマイノリティになる人種であることにも大きく起因しているのではないかと思っていましたが、今回の事件の報道を目にし、また、これまで職場を共にした白人の移民たちを思い出してみると、白人か否かなどあまり関係なく、すべての移民たちがこの壁で少なからず苦しむのかも知れないと思いました。

 容疑者はイスラム教徒だったようですから、9/11やその後のアメリカの空気なども、彼にとっては大きな越え難い「壁」を形成したのかもしれません。兄は映画「ボラット」が好きだったと報道されていますが、あの映画のオカシさ/面白さというのは移民としてアメリカに住んでみると、その秀逸なバカさに感心させされるものです。この辺りの感覚もこの容疑者に共感してしまう移民たち、少なくないでしょう。




 犯人がやったことは決して許されることではありませんし、この国にいる何百万人という移民は別に爆破事件など起こさずアメリカ社会の一員として平和に暮らしているのであって、この容疑者を特別視する気もありません。

 その一方でこの若者たちが抱えた疎外感を思うと、なんともやるせない気持ちにさせられます。逃げ回って射殺されるのではなく、自首してくれればと思います。彼が自首して犯行に至るまでの心情を吐露してくれれば、例え僅かでも疎外感をもつ若者が減らすような工夫が出来るかもしません。



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