2013年2月18日月曜日

企業が「帝国化」する

最近、『企業が「帝国化」する』というタイトルの本を出版しました。

いわゆる「グローバル企業」らは急速に帝国化しつつあります。

かつてはマイクロソフトが帝国になぞらえられ、最近ではアップルやグーグル、あるいは石油最大大手のエクソンモービルなどがしばしば「帝国」と揶揄されます。

彼らがどんなあこぎな商売をしているのかは本書を読んで頂くとしましょう。概略を知りたい方はこの書評(琥珀色の戯言/【読書感想】企業が「帝国化」する)を読んで頂けるといいかもしれません。

とにかく唖然とするほど商売に徹しており、なんというかあまりの思い切りの良さに清々しささえも漂うほどです。

例えば最近、英フィナンシャル・タイムズに掲載された"Amazon unpacked"(アマゾン、梱包を解く)という記事が話題になっています。

アマゾンの物流センターでは人間がまるでロボットのように低賃金で使われている、というお話です。

作業員たちの手にはリアルタイムで生産性を図るためのセンサーが着けてあるという記述があります。要するにサボっているとすぐにバレるような仕組みが電子的に構築されていることのようです。

忙しい日にはフットボール競技場ほど大きさの倉庫内を1日24キロ(!!)も歩く、とあります。人間の歩く速度は時速4キロ程度と言われていますから、1日6時間歩いていることになります。

倉庫内の様子もなかなかインパクトがあります。


この中を行ったり来たり6時間歩くわけですね。具体的なイメージが湧いてきます。

しかしこんなのは序の口です。

アップル製品を製造しているフォックスコンでは月80時間余りの残業がしばしば発生し、賃金が払わわれないことがあることなどが発覚して問題視されました。

これを読んで「月80時間なんてたいしたことないよ。オレだってもっとやっているし、そんな企業、日本にだって沢山ある」という反応も頂きました。私も最初はそう思ったんです。

ですが大きな勘違いがあります。フォックスコンの労働者はデフォで週6日、1日12時間労働なんです。つまり残業ゼロの状態ですら日本人の定時の労働よりも月〜金で20時間、そして土曜日に12時間の合計週32時間働いています。4週でなんと128時間。これにプラスして残業が80時間です。つまり日本人の基準に直すと月208時間の残業と同じ労働時間です。

しかも時給2ドル。12人部屋の寮にベット一つだけあてがわれて、これをこなすんです。

で、どうする?
アップルやアマゾンなどといった「私設帝国」たちはどこもこういった搾取の上に成立しています。食品産業もエネルギー産業も、産業という産業が同じことです。

では、こんな時代をいったいどんなふうに生きていけばいいんだろう? と模索する過程で書き上げたのが今回の一冊です。

最初は現実の救いのなさに暗澹として

貴様はもう死んでいる

というタイトルの最終章を設けて、ひたすら残酷な現実をこれでもか!と書き続けようかと思ったくらいです。

でもそれじゃああんまりだと思ってもう少し希望のあるメッセージを書いてみました。

小飼弾氏はこれを「ジェダイになるしかない」というふうに読み取ったようであり、半導体開発の第一人者で現在中央大学で教鞭をとっておられる竹内健氏は「当たり前のこと」と受け取ったようです。

私は両氏のそれぞれの解釈をご拝読させて頂き、それぞれに「その通りだ !」と感じました。両氏とも鋭い切り口で読み解いてくださり、感謝の限りです。



この最終章はあと数年で大人になる私の息子たち、そして彼らの世代へのメッセージでもあります。

帝国で働くもよし。そこから外れて生きる道を模索するも良し。

あるいは倉庫で1日24キロは歩くのも良かろう。

帝国なんて打ち壊してやる、というのもまたひとつの在り方だと思う。

選択肢は君たち自身の手にある。

いずれにせよ仲良しこよしで生きて行ける時代はそろそろ終りつつあるみたいだ。

自分の頭で考え、自分で切り拓いてゆけ。

それが君たちへのメッセージ。

Good Luck!!



応援よろしく!→人気ブログランキングへ

2013年2月10日日曜日

アップルが失いつつあるもの

最近「アップルはイノベーションをもう引き起こせないのでは?」などといったような論調の記事を沢山目にします。

もうジョブズがいないからイノベーションは引き起こせない、などなど。

でもアップルってそもそもそんなにイノベーティブな会社でしたっけ?

私にはそうは思えません。

GUIがゼロックスのパクリだったことはよく知られています。

================

MP3プレーヤのようなメモリに音楽を保存する装置を最初に考案したのはKane Kramerという発明家で、なんと1979年に考案しているんです。

アップル以前にMP3プレーヤを製品化した会社は沢山あります。1998年頃には少なからぬ商品がすでに出回っていました。

iPodの登場はさらに3年後の2001年です。明らかに後発です。

ちなみにKane Kramerが考案したのはこんなヤツでした。


================

じゃあスマートフォンは?

スマートフォンだってね、2001年にはPalmのOSを搭載したKyocera 6035がすでに商品化されていました。

そのあとにだってソニーのクリエとか、かなり優れた製品が少なからずありました。でもなぜかいまひとつ盛り上がらず2005年頃には生産終了。

iPhoneが万を喫して登場したのは2007年でした。

================

じゃあタブレットは?

ネットが見れるタブレットって、2005年にはNokia 770 Internet Tabletなんていう商品が売られていたんです。

iPadが発売されたのはそれから4年も経った後の2009年。

================

こうした事例を見て考えてみるべきなのは、何故アップルが成功したのかではなく、なぜソニーをはじめとする日本企業がMP3やスマートフォンで市場創出に失敗し、アップルの後塵を拝し続けたなのかではないでしょうか?

================

アップルはむしろ、ジョブズ復帰以前のほうがずっとイノベーティブだったようにすら思います。

QuickDraw, QuickTime, ColorSync, QuickTime VRなどのさまざまなテクノロジーが生み出されました。デジカメなんてロクに存在しない時代に、コンピュータを母艦としたデジカメ、QuickTake 100 なんていう製品を生み出したりもしました。

それからニュートン。ハンドヘルドデバイスの先駆けでした。

ただこの時代をアップル、何を作っても作りっぱなしで、どの製品もバグだらけの糞みたいな製品ばかりでした。

当時のアップルは何のポリシーもなく、まるで文化祭の出し物のように適当に面白そうな製品を作っていました。中で働いていると面白いところではありましたが、会社がこんなことでいいのかと言う素朴な疑問を抱いてしまうような素敵すぎる会社だったんです。

================

アップルを現在のアップルに押仕上げたのはイノベーションよりもむしろ、その徹底した任務遂行能力です。

イノベーションがなくなった云々よりも、地図問題に見られるようなかつてのアップルを彷彿とさせるような詰めの甘さや、ジョブズ時代にはなかった情報の漏れ具合のほうがよほど気になります。

ジョブズの死後失われたものはイノベーションなんかではなく、ジョブズの存在そのものがもたらしていた「畏怖」と言っていいほどの独特の緊張感だったのではないかと思います。

アップルが今後も成功して行けるかどうかは、ジョブズ時代の緊張感を維持できるかどうかにかかっているような気がします。



応援よろしく!→人気ブログランキングへ