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Brighture English Academy 代表。趣味はウクレレとかハイキングとかDIYとか旅行などなど。在米20年。シリコンバレーに住みつつ、日本とアメリカとフィリピンで会社経営しています。最近は英語教育がライフワークになりつつある。

2011年10月13日木曜日

Apple の今後を占ってみる

この週末、久しぶりにアップル時代の友達と喋る機会がありました。彼らは全員現役のアップル社員ですので、話は当然スティーブ・ジョブスの死と、彼の亡き後のアップルはどうなっていくのか?ということになりました。

話はすぐに「Tim Cook が上手く社内を治められれば、しばらくは安泰だよね」と「クラウドサービスの出来にかなり左右されるのではないか」といったあたりに落ち着きました。それはまったくその通りなんですが、ちょっと腑に落ちなくて考え続けていました。ところが今日何となく腑に落ちてきたので書いてみることにしました。

スティーブ・ジョブスは希代のカリスマ経営者である以上に「歴史に稀に見るマーケティングの天才」だったと思うんです。どのくらいの天才かというと、例えば黒人の公民権運動を大前進させたマーティン・ルーサー・キング牧師やアポロ計画をぶち上げたジョン・F・ケネディ、あるいはインド独立の父と称せられるマハトマ・ガンジーなどと並ぶ、世の中を変えていく言葉を持った天才です。

アップルの製品というのは極めて洗練されていますが、冷静に考えれば類似商品なんていくらでもある上に、アップルによって新規に発明された、というわけでもありません。iPadの前にタブレットPCは存在しましたし、iPhone の前にもスマートフォンは存在しました。MP3プレーヤに至っては、iPod以前にも本当にゴロゴロしていました。しかもアップル製品は価格はそれなりする上に、購入後はiTunesやアプリケーションストアなどのエコシステムに縛られてしまうのです。しかし何故かスティーブの手にかかると、すべてのマイナス点が帳消しにされ、そしてあたかもアップルがそれらの製品を新規に発明し世の中に送り出したかのような錯覚に落ち入ってしまいます。

スティーブのスゴいところは大衆を酔わせてしまうばかりではなく、音楽業界の重鎮たちをもその話術で飲み込み、音楽のネット有料配信を確立してしまったことです。この交渉、スティーブ以外の人が果たしてまとめられたんだろうか?と考えると暗澹としてしまいます。ですので今後のアップルを考える上で、このような交渉力もかなり削がれたアップルを想像してみる必要があります。


その他の要素も考えてみましょう。

Tim Cook はアップルの社内抗争をコントロール出来るんでしょうか?



私は出来ると思います。

この人、実は社内でかなり恐れられている人です。スティーブの独裁政治を陰ながら支えてきたのは間違いなくこのTim Cook です。

とにかく頭がよく、そして途方もないワークホーリックです。この人からのメール、タイムスタンプが平気で朝の4時半とかそういう感じです。この人、自分の部下が月曜日からフルパワーで働けるように、日曜日にスタッフミーティングをすると聞いた事があります。さらにフィットネス・フリークで、会社のジムに朝の5時台にやってきてワークアウトしています。

この人、決して声を荒げたりする人ではありません。あるいは「同じ空気吸いたくない」なんて口が裂けても言わないタイプです。ところが会議などで部下がいい加減な返事をすると、冷静なトーンのまま大の大人が泣くまで執拗に質問攻めにするようなタイプの人です。

またゲイらしいです。本人は公にしていませんが。おそらく99.9%ぐらいの確率でゲイなんでしょう。ゲイの噂が絶えたことがありません。アップルはゲイなんてゴロゴロいますからこれについてとやかく言う人は誰もいません。私もゲイの上長に長らく仕えていました。ゲイの方というのはキレイ好きでお洒落のセンスもよく、そして非常に細かい方が多いので、多分Timもそういう性質なんじゃないかと思います。おそらくこういった部分はアップルの洗練されたデザインを維持していく上で強力なプラスとして作用するでしょう。

次に鍵を握るのがアップルのクラウドサービスです。
アップルのクラウドサービスはずっとGoogle, Amazon あるいは Facebook などの会社の後塵を拝してきました。アンドロイドの端末の販売台数はアメリカ国内に関して言えばアップルを抜きつつあり、またAmazonもつい先日Kindle Fireをはじめとする低価格の端末を発表しています。つまり、そもそも優れたクラウドサービスを持つところが、低価格の端末を手にし始め、確実にシェアを伸ばしているんです。

アップルは優れた端末を持っているのに、これまでパッとしないクラウドサービスしか提供出来ていません。icloudが上手く行けば、鬼に金棒ですが、もしも躓くとかなりの痛手になると思います。これはアップルの3〜5年程度の近未来を占う上で重要な試金石となるような気がします。

今後もアップルは、スティーブ・ジョブスなしで、世の中から「目の付けどころはいいのに成功していない製品」を発掘し、その製品を再定義し直して爆発的に売る、と言ったようなマジックを続けていくとが出来るんでしょうか?

私は正直言って無理だと思います。3年ほどは今のペースを維持した上で、段々と失速し始めるんじゃないかと思います。それでも向こう10年やそこいらは人々を魅了し続ける会社であるでしょう。そして生のスティーブ・ジョブスを知るTim Cook をはじめとする現在の経営陣が引退し始める頃、アップルの本格的な失速が始まるのではないかと思います。

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6 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

初めまして。いつも楽しみに読ませていただいております。僕は、Walkmanを出した頃のソニーのように、最近のapple製品には魅了され続けています。まつひらさんのおっしゃるように10年後のappleは、現在のソニーのような企業になってしまうのでしょうか。

匿名 さんのコメント...

私はジョブズ氏はADHDだったんじゃないかと思っています。

そうだとするとAppleがまつひろさんの予測どおり、ジョブズの一代で終わってしまってもおかしくありません。

まつひろ / Matsuhiro さんのコメント...

>まつひらさんのおっしゃるように10年後のappleは、現在のソニーのような企業になってしまうのでしょうか。

私にはSteve Wozniak とSteve Jobs という2人の創業者が、ソニーの創業者の伊深大、盛田昭夫の2人に重なって見えます。盛田昭夫氏は1999年に死去しましたが、その後のソニーの低迷っぷりを見ると、アップルが同じような道を辿る可能性は少なくないように感じます。

まつひろ / Matsuhiro さんのコメント...

>私はジョブズ氏はADHDだったんじゃないかと思っています。

いや、そんなこともないんじゃないかと思いますよ。もっとも断言出来るほどSteve のことを知っているわけではありませんが。

白玉ぜんざい さんのコメント...

以前日本で紹介されたナーフガンの記事と動画を拝見して以来、まつひろさんのブログを楽しく読ませていただいてます。

マウスとキーボードに縛られたPCに、マルチタッチとsiriを加え、より柔軟なAIを持ったネット統合システムを用意をしてくれたら、子供から老人まで虜にする執事なmacが誕生するでしょう。それを直近に成せるのはアップルをおいて他にはないと思います。そんな未来を期待してしまいます。

まつひろ / Matsuhiro さんのコメント...

白玉ぜんざいさん、

私もそんなパソコンを出すとしたら間違いなくアップルだと思いますよ。私はアップルの株をしこたま持っているのでアップルには是非頑張り続けて欲しいです。